活動報告

2024年8月の「昔ばなし語りの会」

8月18日(日)13:30~15:00
上田創造館 民俗資料館で、「昔ばなし語りの会」を開催しました。
今回のテーマは、夏を涼しくする「こわ~い話」。
聴衆は30名。夏休みとあって、お子さんも何人か見えてくれました。開催を知らずに上田創造館に来て、ついでにちょっとだけと思って覗いてみたら、語りに引き込まれてそのまま最後まで聴いてくださったというご家族もいらっしゃいましたが、半数以上はリピーター。楽しみにしてくださっている方も大勢いらっしゃるようです。
創造館スタッフの工夫で、語り手の顔に青いライトが当たるようにしていただき、「こわ~い話」の雰囲気を演出していただきました。

 

お聴きいただいたみなさんからいただいた感想です。

◦ 語りを聞いて、自分で想像しながら物語ができていく。面白いです。(40代)
◦ 昔にあったことなどいっぱいきけてよかった。またきたい。(小学生)
◦ 皆さんそれぞれ素晴らしかったです。いい時間をありがとうございました。(70代)
◦ たのしかったです。(80代以上)
◦ いつも楽しく聞かせていただいております。
 「蛇の湯治」蛇女の迫力ある声で、なかなかこわかったです。
 「じいさん、いるかい」追いつめられた薬屋さんに同情しました。何にも悪くないのに。
 「炭焼きかかの首」ふしぎな話でした。串ざしの女の首、なかなかこわいですが、家に泊めてもらうのに、何度言われても「二人」というのが、いじらしいですね。血の涙を流してととの名を呼ぶ女、あわれでした。
 皆さん、心に沁みる深い声で聴き入りました。ありがとうございました。(60代)
◦ たまたま図書館へ来て知りました。みなさん話し方がとてもすばらしかった。またぜひ聞きたいと思います。(70代)
◦ 久しぶりに聞かせていただき、本当に楽しめました。日本の昔話は、基本的に優しいと改めて感じました。中村さん、益々いろり端のおばあちゃんが板につき、すばらしい雰囲気で、一気に昔話の世界に引き込まれました。どうぞいつまでもいつまでもご活躍ください。
みなさん、本当に各々の世界をお持ちで、とても素敵でした。稲垣先生にお会いしたくてお会いしたくて、伺いました。先生、お元気でいてくださいね。(70代)
◦ 稲垣さん92歳とは…。また中村さんもすご~いですね。好きな事ができるとはありがたいですね。前半は知っている話でした。
 「橋姫」長い語り、覚えるのは大変だったと思います。
 真夏でのこわい話は一番! 毎回楽しみにしております。ベテランの皆様、いつもありがとうございます。(70代)
◦ たのしかった。(80代以上)
◦ 初めて拝聴しましたが、語り手の皆さんの心を込めた語りに引き込まれた。機会あればまた参加したい。(20代)
◦「絵にかいた猫」ねずみと猫の大小関係が逆になるお話でした。
 「あの世からのことづて」先祖を大切にするお盆らしいお話です。ちょっと早口の部分がありましたね。
 「じいさん、いるかい」追われ追われて恐さがつのった先のオチは、ホッコリするものでした。
 「橋姫」長編のお話でした。
 「土を食った婆さま」貧しい暮らしの中の悲しいお話でした。
 「炭焼きかかの首」不思議な不思議なお話でした。
 青いライティングが良かったです。(70代)
◦ 涼しくなる程ではありませんが、皆さんのお話は語りも含めてすばらしかったです。楽しく拝聴しました。ありがとうございました。(70代)
◦ どの語りも、心に残っています。次回もとても楽しみです。いつまでも若々しい稲垣先生、いつまでも元気ください。(50代)
◦ 今回も穏やかな時間を過ごさせていただきました。毎回思うのですが、語りの方々の声の大きさ、間の取り方が素晴らしく、情景がうかびます。ありがとうございました。(70代)
◦ 夏に良いお話をありがとうございました。こわい話でしたが、楽しかったです。(60代)
◦ 話にでてきたほとんどの人が、かならずしんでいるのでびっくりした。(小学生)
◦ こわそうだと思いましたが、子どもでも聞けるこわさでした。と思ったら、最後のお話「炭焼きかかの首」こわかったです…。お話をすべて覚えておられる語り手の方々、すばらしいですね。貴重な体験をありがとうございました。
 「炭焼きかかの首」かかはずっといっしょにいられてよかったですね。かかの「あぃ~」と「ふたりだぁー」が愛らしい。(30代)
◦ こういう機会はなかなかなく、貴重な体験でした。少しだけ聞くつもりが、だんだん聞き入ってしまいました。(50代)
◦ 遅くなってしまい、すみません!! 最後の稲垣先生の語りが聞けてよかったです。

2024年08月18日

2024年 塩田公民館 夏休みしおだっ子講座「むかしばなし」

2024年8月8日(木)19:00~20:00

昨年に引き続き2回目となる塩田公民館主催による夏休み子ども向け講座のうちの一講座「むかしばなし ~こわいはなしが またくるぞ~」を担当。
保育園児~小学生のお子さん20名、保護者12名に昔ばなしを愉しんでいただきました。
昨年に続き今年もまた聴きに来てくださったというお子さんも何人もいました。
演目は、「牛鬼渕」「火の玉」「こんな晩(六部)」「学校の怪談」の4つ。

2024年08月08日

六合 民話探訪

2024年8月4日
毎年「民話 語りっこ 学びっこ」に参加してくださっている群馬県吾妻郡中之条村の「六合の文化を守る会」を訪ねました。
参加者7人
7人乗りワゴン車(セレナ)1台に、全員が乗り込んで出発です。

青木村 発8:00-上田8:40-鳥居峠9:20-10:00長野原10:35-11:10六合 入山 ねどふみの里(六合民話の家)11:45
-尻焼温泉 川風呂11:50-12:05大仙の滝12:35-12:45荷付場の道祖神12:55-13:00道の駅六合(昼食)13:55
-14:05暮坂高原オートキャンプ場「半右衛門の泉」14:40-14:55旧太子駅15:20-白砂川「河童渕」-15:30赤岩集落16:25
-上田18:10-青木村 着18:40

六合では、「六合の文化を守る会」の山本 茂先生に案内していたきました。感謝に堪えません。
また、暮坂高原オートキャンプ場では、昨年の「民話 語りっこ 学びっこ」で「半右ヱ門の泉」を語ってくださった中沢久美恵さんにお会いでき、キャンプ場内にある半右衛門の泉を見せていただきました。

ねどふみの里(六合民話の家)で山本先生と合流。

山本先生から六合民話の家の説明をお聞きする。

民話の家に上がらせていただき、内部を見学。

二階には、昔懐かしい民具が並べられている。
写真中央の竹籠は、病人駕籠。
山間に暮らす六合の人々が病院にかかることはほとんどなかった。家庭常備薬の富山の薬で済ませるのが常であり、病人駕籠に乗せられて草津の病院まで運ばれるときは、看取ってもらうもらうときだったという。どんな思いでこの駕籠に乗せられ、見送ったことだろう。今生の別れそのものであったに違いない。死出の旅というほかない。ここに、暮らしがある。

屋根裏の骨組みは、すべて縄で組まれている。

 

尻焼温泉の川風呂では、川の底から湯が湧き出している。川そのものが野天の湯船。

 

世立八滝の一つ、大仙の滝を見るために、滝見ドライブインの駐車場に車を停めると、傍らに地蔵像が二体佇んでいた。
夜泣き地蔵と呼ばれている。
間引きする子どもには新しい草履や下駄も履かせてやれず、この辺りに葬られた。そのために、夜になると「じょんじょ(草履) ほしいよ」「かっこ(下駄) ほしいよ」と言いながら子どもの泣く声が聞こえたという。
その霊を慰めようと、夜泣き地蔵が建てられた。
向かって左側の地蔵は左腕で子どもを抱え、足元にも子どもがすがっている。

大仙の滝。落差20mの直瀑。ミストが涼感を呼ぶ。

滝の上流の岩肌の中央に、天狗の足跡(左足 縦10m・横幅5m)が見える。
天狗が一本歯の下駄を脱いで裸足になって岩に飛び移った跡だという。
右足の跡は、20㎞も離れた長野原にあるとか。

世立八滝は、大仙の滝のほか、段々(だった)の滝、箱の滝、久内(きゅうない)の滝、不思議の滝、井戸の滝、殺人(さつうぜん)の滝、仙の滝の7つ。
「殺人の滝」は、昔、旅の僧を突き落とし金品を奪ったことから名付けられたという。
また、「久内の滝」には、久内という人が河童に引き込まれたという民話が残る。
「仙の滝」は、仙人が発見したという。

 

荷付場の道祖神。抱擁道祖神とも。
二体が抱き合っている姿は珍しく微笑ましい。高遠の石工が彫ったものだと言われる。
六合では、道祖神をあちこちで見ることができる。

 

道の駅六合で、昼食。

 

暮坂高原オートキャンプ場。
高原の空気が爽やかだ。キャンプ場内には、小川も流れている。
湧水の「半右衛門の泉」を囲む。

キャンプ場管理棟受付で、中沢さんご夫妻とともに。

 

旧太子駅。駅舎の後ろにホッパー棟が見える。
ホッパー棟やホーム・駅舎の復元などを行い、2018年4月から観光資源として一般公開を始めた。2021年2月、国の登録有形文化財に登録。
太子駅は、戦時中の1945年1月に日本鋼管株式会社群馬鉄山の鉄鉱石を運ぶ専用線 太子線(太子~長野原)の始発駅として開業。1952年10月、国鉄に編入。1954年6月には旅客営業を開始したが、1966年3月に群馬鉄山が閉山し、1971年5月に路線が廃線となった。
終戦7ヶ月前の開業。朝鮮の人々が強制労働させられた歴史を忘れてはならない。戦争は、すべての人々の生命・人権・幸福を剥奪する。

ホッパー棟。全長約100m。
鉱石・砂利などを上部から投入し、下部に進入した貨物車の荷台に直接排出し積載する。
群馬鉄山(現 チャツボミゴケ公園)で採掘した鉱石を直線距離8㎞の索道で運搬し、太子駅のホッパーで、貨車に積み込んだ。
現存するのは1階の柱部分のみ。当時は3階建ての施設だった。

 

国道292号から赤岩集落に向かい、白砂川を渡る。
橋から下流(南側)を眺め、「河童伝説」が残る川筋を望む。

 

赤岩集落。
上の観音堂。集落内最古(1764年)の建築物。唯一の茅葺屋根。

湯本家住宅は、工事中で建物が覆われ見学できなかった。
1806年に建てられ、1897年に3階部分が増築された。2階には、蘭学者 高野長英を匿った「長英の間」が残されている。
切り取った河童の腕を返す代わりに、「河童の妙薬」が伝授されたという伝説が残る。

関家の三階屋。
地区内最大の総三階建て建築物。
上層階になるに従い、軒が迫り出している。養蚕に対応。
集落全体が、2006年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。

集落入口の水車小屋を背景に、全員で記念撮影。

六合は、1889年4月の町村制施行に伴い草津村として発足するが、1900年に分村し、旧 小雨・赤岩・生須(なます)・太子(おおし)・日影・入山の六つの大字を合わせ「六合村」とする。
『古事記』上巻序文に「乾符を握って六合を総べ」、『日本書紀』の神武天皇即位のくだりに「六合を兼ねて以って都を開き」とあり、「六合」とは天地と東西南北、支配の及ぶ範囲「国」を表すことから、「くに」と読む。
2010年3月28日、中之条町と合併。

2024年08月04日

2024年7月の民話学習

2024年7月13日(土)13:30~15:00
参加者9人
「花野の娘」

【学習内容のまとめ】
『日本の民話 第6巻 -土着の信仰-』(角川書店・1973年初版)
 「娘の骸骨」(※稲垣所長 改題「花野の娘」)

「花野」は秋の季語。ただし、季語の成立は江戸時代以降。
万葉集に「秋萩の花野のすすき穂には出でず 吾が恋ひわたる隠り妻はも」

叙述に沿って
「爺(じい)」⇒「じさま」と呼びたい。そのほうが、語り手の肯定的感情がこもる。娘の話し言葉「爺さま」は「じいさま」。
「四月八日」…釈迦生誕日。信心深い爺の人柄がわかる。
「ゆるゆる酒でも」…穏やかさ・風流を感じる一方、ゆったりとした仰々しさのない人柄も感じられる。優れたオノマトペ。
4月8日の日中、現実からの語り出し:骸骨と酒盛り➡夕方(=おおまがどき):境界➡娘:ファンタジー
「はてはてなァ」⇒「はてはて はてなァ」…日本語のリズムと適応。
「爺さま爺さま」…娘の呼びかけは二度。日本の伝統的言い回し。思いを込めて呼ぶ、人としての声がけ。
 ※「もしもし」は応じてよいが、「もし」は妖怪の呼びかけとされ応じるべきでないとされる。
「女の声」…初めて、女性であることが明かされる。
「そろっとふり返って」…不安・怪しみをもった様子。「そっと」とは異なる。
「十七、八の美しい娘」…娘としていちばん初々しい時期。
「爺さま、きょうはおまえのおかげで」
 …「爺さま」は敬語、「おまえ」は近世前期までは目上、近世末期以降は同等以下もしくは親しい間柄への呼びかけ。
  ここでは、親しさを込めた言い方と取るべきか。

2024年07月13日

2024年6月の「昔ばなし語りの会」

6月30日(日)13:30~15:10
上田創造館 民俗資料館で、「昔ばなし語りの会」を開催しました。
今回のテーマは、「今、語りたい、伝えたい民話」。各々の語り手が、"語りたい""伝えたい"思いをもって選んだ民話です。
聴衆は、途中から顔を出してくださった方も含め36名。いつものことですが、メイン会場の"囲炉裏の間"には入りきれず、隣の区画でモニターを通してご覧いただいた方・お子さんも多数いらっしゃいました。

お聴きいただいたみなさんからいただいた感想です。

◦ 「あずきとぎ」始まりの泥っかすの子どもの声がリアルでした。
 「猫檀家」低音が魅力の声でした。
 「おおかみの眉毛」とても不思議なストーリーでした。
 「五郎びつ」心穏やかに聞いていましたが、最後に急展開の災害の話への人情物語。自然災害の備えの大切さを学びました。
 「八幡様の狐」お話の後の逸話もおもしろかったです。母親のことが気になりました。
 「へび女房」母親の愛の大きさを伝える話でした。
 「クチナシの花」毎日のあたりまえの生活の大切さを教える話でした。
 「花野の娘」普段の生活が大切なお話でした。
◦ 毎回楽しく拝聴させて頂いております。今回も穏やかなひとときを過ごさせて頂きました。昔話に聴き入り、毎日の大変な事や気持ちを流して頂き、すっきりとした自分になりました。ありがとうございました。
◦ 亡き母は真田の出。小さい頃、あずきとぎのこと、聞かされました。おりこうにしていないと連れていかれると。十数年たった今、大変懐かしく聞かせていただきました。狐にだまされた人がたくさんいたとか。長野(上田方面)の民話の話、たくさん聞きたいと思いました。
◦ 久々に聞きました。活字を追うとはちがい、とても楽しめました。結末が気になりドキドキしました。ありがとうございました。
◦ 8人の語りにひきこまれてしまいました。1時間30分はあっという間に過ぎてしまいました。またの期の語りの会、楽しみにしております。お互い加齢の身です。お体大切に、よい話を長くお聞かせください。
◦ みんな お話がむずかしかった。「クチナシの娘」が一番むずかしかったけど、帰ったら、娘はクチナシの木だったということがわかった。「五郎びつ」は、最後に五郎がいなくなったのは、食材が一人分足りなくて、自分がいなくなれば足りると五郎が思ったって思いました。おもしろかった。(小6)

2024年06月30日

2024年6月の民話学習

2024年6月15日(土)13:30~15:10
参加者7人
狐の捉え・「信太妻」を巡って

【学習内容のまとめ】
狐=穀物・経典を食い荒らす鼠を捕食⇒神聖化
  捕食シーン…離れた位置から飛び上がって獲物(鼠)を捕まえる=化ける姿・イメージに(シルエットが女性に見える)
陰陽道による分類 陽獣:狸・犬 陰獣:狐・猫
信太妻(しのだづま)
 <平安末期>安倍晴明の父・保名(やすな)の妻となった葛葉(狐)
       子の童子丸に尾を見られ、本性を知られる。
       別れの歌「恋しくば尋ね来て見よ 和泉なる信太の森の うらみ葛の葉」
 <室町時代>説教節として、瞽女が語り広める。

2024年06月15日

2024年4月の民話学習

2024年4月13日(土)13:30~15:20
参加者9人
「真田(千曲川右岸)の狐民話」と「民話の中の狐」

【学習内容のまとめ】
真田に伝わる狐民話 「魚取りと狐」「狐の恩返し」「山遠家の狐」
 共通点…狐と人間との関わりが軟らかく後味がよい。※真田の天狗話「角間の天狗」も、子どもにやさしい。
狐=農耕神の示現←人里近くの山林に生息 生殖や採餌の行動が季節により特異(3~5月に出産し鼠を多く捕食)
 狐への信仰が変化・衰退し、化ける・化かすものに。
古典の中の狐
 『日本霊異記』…狐女房の原型。せめて夜だけでも来て共寝して⇒「来つ寝(キツネ)」
 古名「ケツ」「キツ」
昔話の中の狐…多様な様相
 人間に化けて恩返しする 人間を化かそうとして退治される 狐が化けるのを見た人間を化かす 仇返しする その他
 動物昔話のいたずらもの

2024年04月13日

2024「春を呼ぶ 昔ばなし語りの会」

2024年3月25日(日)13:30~15:00
塩田の里交流館 とっこ館で、「春を呼ぶ 昔ばなし語りの会」を開催しました。
「春を呼ぶ話」をテーマにしたのは、昨年に続いて二度目。
会場の「語りの間」いっぱいになる27名の皆さんにお聴きいただきました。

演目・お話の内容は、以下のとおりです。

 

お聴きいただいたみなさんから、たくさんの感想をいただきました。

◦どのお話も情景が鮮明にうかび、聴き入りました。日常のせわしい時を離れて、穏やかな素晴らしい時間を本当にありがとうございました。次回も楽しみにしています。
◦ バラエティ豊かな語りで楽しく聞かせていただきました。言葉でこんなにイメージをふくらませられるのかと思い感動しました。
◦ 語りは、絵本や紙芝居のように視覚を通して物語を楽しむのと違って、語り手の口調や声や間でイメージを作って楽しむことなんだと改めて思い感じたひと時でした。久々に参加させていただきました。
◦ とても楽しく聞かせていただきました。語り方が、とても聞き手にとどく語り方で良かったです。男性の方のお話は初めてでしたので、楽しくとてもゆったりとした気持ちで聞かせていただきました。
◦ 間の取り方と息づかいがすばらしいと感じました。春の香りのする情景が浮かびました。楽しかったです。
◦とっこ館には初めて来ましたが、景色も良く素敵な所でした。みなさんの語りは、お話の選び方や語りにそれぞれの方の個性がでていて楽しかったです。民話のことをもっと知りたい、語りはやったことがないですが、ぜひ自分でもやってみたいなという気持ちになりました。塩田平民話研究所の活動を見学させていただくことは可能でしょうか?

2024年03月24日

2024年3月の民話学習

2024年3月9日(土)13:30~15:00
参加者5人
「昔話の結句(結末句)」

【学習内容のまとめ】
1.形式句…一話が完結したことを明言する。土地によって違う。
とっちばれ(青森県)・どっとはらい(東北北部)・とっぴんぱらり(東北)・そうろう(北陸他)
いちごさかえた(新潟・東北・関東・中部地方、近畿・中国地方の一部)・さみさっきり(岐阜)・たねくさり(京都)
かっちりこ(広島)・昔こっぷり(鳥取・島根・中国)・昔まっこう(中国・四国)・米ん団子(大分)・とうがっさ(鹿児島)
○言葉の意味説明不能。伝承性が強く原義が次第に薄れ慣用句として成長。一話の完結を昔話固有の非日常的句で印象的に伝えた。
○登場者の目出度い生涯を祝福する意味を込め、主題を強調したものもある。
 「いちごさかえた・いちごさかいた」=「一期栄えた⇒市が栄えた」
○世間話・事実譚・伝説には付けない。
2.教訓的な文…聴き手に教訓的なメッセージを伝える。
3.いわれ・起源を説く文…

2024年03月09日

2024「新春 昔ばなし語りの会」

2024年1月28日(日)13:30~15:00
上田創造館 民俗資料館で、「昔ばなし語りの会」を開催しました。
テーマは、新春に因み「おめでたい話」。とはいえ、元旦の能登半島地震から4週間。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆さん、今なお避難生活を余儀なくされている皆さんに想いを馳せながらの語りの会。能登の民話も折り込みました。
大人39名、子どもさん2名、計41名の皆さんに耳を傾けていただきました。今回も大入り満員、常連さんが6割越えでした。

演目・お話の内容は、以下のとおりです。

2024年01月28日

12月の民話学習

12月16日(土)13:30~15:00
参加者6人
「ジプシーの昔話『なんでも見える鏡』」(フィツォフスキ:再話 内田 莉莎子:訳 スズキ コージ:画 福音館書店)

【学習内容のまとめ】
グリム童話「あめふらし」と同じ内容だが、グリムの王女は男に助けてもらい好かれるだけの存在であるのに対し、『なんでも見える鏡』の王女は自らジプシーに恋をし自立していく点で異なっている。グリムの時代のヨーロッパの生活・考え方が女性は男性に従属するものとしての扱いを受けていたのに対し、ジプシーの生活様式・文化においては女性自身が役割をもって生活していたことの反映である。
『なんでも見える鏡』でジプシーを助けるのは、1銀色の魚・2若ワシ・3アリの王さまの3回。昔ばなしのセオリーどおりであるが、同時に、1単体の水中生物・2複数の空中生物・3群れの地中生物へと、数量と生息域を発展させる。また、1から2では身近なところから遠くの場所に視座を移すが、2から3では王女のすぐ近くへと視点が大転換される。
1は存在そのものに過ぎず、2あることで比較・特色・葛藤が生まれ、3は新しい価値を生み質の違うものが創造される。昔ばなしの3回の繰り返しも、この法則に則っている。
『桃太郎』の援助者となる1犬・2猿・3雉についても、「忠誠・知恵・勇気」の象徴とする固定観念ではなく、1身近な動物から2野生動物、さらに3空中のそれへと展開し2から3の場面で決定的飛躍がある。神話『大国主』の根の国の出来事も同様であり、スサノオの持ち込む難題 1蛇の室・2蜈蚣と蜂の室・3火の海となる野原に射込んだ鳴鏑の3回は、1・2の室から3の野外へと転換され、スセリビメが援助者となっている。
鏡は助けるもの、帽子の飾りはジプシーの象徴であることにも着目しておきたい。

2023年12月16日

第2回 民話 語りっこ 学びっこ

2023年11月5日(日)13:00~17:00
川西公民館において「第2回 民話 語りっこ 学びっこ」を開催しました。
民話に関心を寄せてくださる50余名の皆さんにお集まりいただきました。心より感謝申し上げます。

学習講演会 13:00~14:30
塩田平民話研究所事務局長 坂井 弘が、本年度のテーマである「白山信仰」に関する基礎的内容を解説した後、塩田平民話研究所長 稲垣勇一が、「白山信仰 -山岳信仰との関わりの中で-」と題した講演を行いました。
講演の要約
上田小県地方における民話の分布を見ると、千曲川を挟んだ右岸には白山信仰や天狗・狐などに関わる民話、左岸には高僧伝説が多く残る。そこで、右岸を「山地神道文化圏」、左岸を「平地仏教文化圏」と呼ぶことにしたい。民話は、そこで暮らす人々の暮らしや文化と密接に結びついている。
「山地神道文化圏」で暮らす人々は、山岳と平地との境界である山地で修行する修験者や、そこに生きる動物たちと交流する。平地に暮らす農民と一線を画す技術者や芸能者たちもまた、境界に暮らす人々であり流浪の民であった。こうした人々は、珍重される一方、差別される対象でもあった。白山信仰は、そうした人々との結びつきも深い。
民話「坊さまの木」は、差別される側にあった坊さまが、亡くなってもまだ差別する側の人々に喜びをもたらす物語であり、差別される側の者の限りない優しさを感じさずにはいられない。

 

民話 語り 14:30~16:00
以下の演目が語られました
中沢久美恵さん・黒岩さちさんは、六合の文化を守る会のメンバー。山本 茂さんも同行してくださいました。
土屋 叶実さんは、民話塾スマイルキッズたんぼぼの受講生。5年生です。

 

交流会 16:20~17:05
12人が参加し、講演や語りの感想、日頃の生活感、活動紹介など、自由に語り合いました。

2023年11月05日

10月の民話学習

10月14日(土)13:30~15:40
参加者6人
「白山信仰の特徴」

【学習内容のまとめ】
1.九頭龍
翠ヶ池に出現するも、泰澄は「本当の姿ではない」として追い払う。
九頭龍は水源信仰の神であり、白山信仰の根本に九頭龍信仰があったと考えられる。
2.十一面観音
インドで生まれた最初の観音は聖観音。半過恣意像の形を取り、末法の世をどう救うべきか考えている姿であり、人間の苦しみを救うことはできない。
そこで、次に生まれたのが十一面観音。現世の人間の苦しみ・悲しみを救う。東・西・南・北・北東・南東・北西・南西の8面と上下の2面、正面、の11面を見据え、あらゆる方角を高い場所(山)から見ている。山岳信仰と一致。
その次には、准胝(じゅんてい)観音が生まれ、十一面観音が救えなかったものを救う。
泰澄が求めたのは十一面観音であり、そこに泰澄の見識がある。
3.海
対馬海流にぶつかったリマン海流は、日本海中国地方沿岸から能登半島に向かってUターンする。この流れに乗って朝鮮から簡単に日本に到達することができた。泰澄の弟子の一人、臥行者は、蜂を使って日本海にあった船荷を泰澄の元に届ける。
4.川
水源信仰=手取川・九頭竜川・長良川
*形式的には
役小角(えんのおづの)が一切出てこない。泰澄がその役を引受けてもおり、また、地域の民が独自のものを信奉し役小角の影響を排除していたとも考えられる。
さらに、被差別部落との関係についても探求したい。彼らは、非定住民として、天皇から委嘱された職人の仕事をしているという自負を持っていた。

2023年10月14日

9月の民話学習

9月16日(土)13:30~15:15
参加者7人
「日本書紀に見る菊理媛」

【学習内容のまとめ】
白山信仰の祭神・菊理媛は、『日本書紀』巻第一 神代上 第五段 一書(あるふみ)の第十にのみ登場する。
イザナミの言葉を泉守道者(よもつもりびと)がイザナギに伝える。
<「『吾、汝と已に國を生みてき。奈何ぞ更に生かむことを求めむ。吾は此の國に留りて、共に去ぬべからず』とのたまふ」とまうす。是の時に、菊理媛神、亦白す事 有り。伊弉諾尊聞こしめて誉めたまふ。乃ち散去けぬ。>
菊理媛がイザナギに何を言ったかは書かれていない。その後のイザナギの行動からすれば、禊をするよう勧めたと解釈することが定説になっている。(※以上、1月の民話学習内容と重複)
イザナギの禊によって生まれた神は、水に入って磐土命、出て大直日神、また入って底土命、また出て大綾津日神、また入って赤土命、また出て大地海原諸々の神々。(※『日本書紀』本文に登場する神や、『古事記』に記された神とは異なっている。)水に3回入っていることに、聖数としての意味がある。

その他
山岳信仰を司る階層分類➱山岳(祖霊信仰・水源信仰)、里山:麓(妖怪・山人)、村(里人・村人)のほか、里山と村の間に、生活・文化・技術力に長けた(遍歴民=ジプシー)の存在を考える必要がある。

2023年09月16日

大星神社で語り

8月28日(月)10:00~11:00
ボランティア大星の皆さんに招いていただき、大星神社境内で語りをしました。
蝉時雨の響く境内の木立の中、瓶ケースを重ねた特設のステージが用意され、上田ケーブルビジョンの取材・ビデオ撮りも入って、40名ほどの会員さんを前に昔ばなしを語らせてもらいました。
演目・語り手は、  においの値段(坂井 弘)  酒の好きな菩薩様(中村安子)  つつじの娘(坂井弘子)
自慢焼とお茶もご馳走になり、旧知の方とも交流できて、とても楽しいひと時でした。

2023年08月28日

8月の「昔ばなし語りの会」

8月20日(日)13:30~15:30
上田創造館 民俗資料館で、「昔ばなし語りの会」を開催しました。8月の例会は、コロナ禍での感染拡大を受けて中止することが多く、3年ぶりの開催でした。
今回のテーマは、「こわ~い話」。暑い夏に、少しばかり涼しさを味わっていただければという趣向です。
子どもさん14名、大人34名、計48名の皆さんが耳を傾けてくださいました。子ども達は、怖い話が大好き。夏休み中でもあり、子どもさんにせがまれて訪れてくださった親御さん連れも大勢見えました。これまでにない大入り満員で、狭い会場に入りきらず、モニターでご覧いただいた方も多くいらっしゃいました。

演目・お話の内容は、以下のとおりです。

2023年08月20日

夏休みしおだっ子講座で「こわい話」を語る

8月8日(火)19:00~19:50
塩田公民館から依頼され、公民館主催の「夏休み しおだっ子講座」で語りをしました。
テーマは「むかしばなし ~こわいぞぉ…こわいぞぉ…!!~」
申し込みは小学生5人とその親御さんのみだったのですが、当日には申し込みされていなかったお子さんやご家族も大勢訪れ、20人ほど集まりました。
灯りを消し、ローソク2本。懐中電灯の光が語り手を照らし、不気味です。子ども達は、お父さん・お母さんの膝に入ったり、しがみついたり、思い思いの恰好で「こわ~い」昔ばなしに聞き入ってくれました。
語った演目・語り手は、
   夜は寝るもんじゃ(小林寛恵)  小太ばば(市川和枝)  山伏と死人(坂井弘子)  おいてけ堀(坂井 弘)
子ども達は、怖いくせに怖い話が大好きです。

2023年08月08日

7月の民話学習

7月15日(土)13:30~15:00
参加者7人
「真田と塩田の民話比較」

【学習内容のまとめ】
天狗と狐の話は、真田にはあるが塩田にはない。「天狗」の名を冠した地名が2、3見受けられるのみ。両地区とも、狸の話はない。真田の狐の話「魚取りと狐」「狐の恩返し」「山遠家の狐」には、山の暮らしや生き物への優しさに溢れている。
地蔵ばなしは、塩田にも真田にもある。塩田の「金焼地蔵」と同じ内容の「身代わり地蔵」が真田にある。
高僧伝説は、塩田にあって真田にはない。
人や動物の死に直結する話は、両地区とも見られない。

こうした両地区の民話の違い・特色は、なぜ生まれてきたのか。問題提起としたい。
千曲川右岸・川東の真田と、左岸・川西の人々の生活、環境、山との結びつきの違いから生じていると考えられる。
一つの仮説として、真田は白山信仰の影響が強く、他の宗教・信仰が入り込む余地がなかったのではないか。

2023年07月15日

民話探訪 真田地区

7月1日(土)13:00~16:10
参加者8人

まず向かったのは、真田町・長にある山家神社。押森 慎宮司さんに拝殿に案内され、お祓いを受けてから「山家神社と民話」のお話を伺いました。民話と神社や地域の歴史・文化が深く結びついているというお話に感銘を受けました。押森宮司さんのお人柄にも心を打たれました。気がつくと、1時間半近く過ぎていました。

拝殿を辞して表に出ると、本降りの雨。
次の目的地・角間渓谷は、雨のために車窓からの見学。角間温泉脇の渓谷に覆いかぶさるようにして切り立った崖に感嘆。「ここなら、鬼が出そう!」と、一同納得。
市街地に向かう途中、千古の滝へ。雨で川淵までは降りられませんでしたが、神川に沿って走る道から滝を望むことができ、晴れた日の再訪を誓いました。

2023年07月01日

6月の「昔ばなし語りの会」

6月25日(日)13:30~15:20
上田創造館 民俗資料館で、恒例の「昔ばなし語りの会」を開催しました。
今回は、民話キッズたんぽぽの受講生 小学校5年生の土屋叶実さんも出演。一昨年6月の「昔ばなし語りの会」、昨年10月の「民話 語りっこ 学びっこ」に続く三度目の出演です。長い演目も語れるようになり、成長著しい大人顔負けの語りでした。
25名の方が聴いてくださり、お顔を見知った常連さんも多くなっています。

演目・お話の内容は、以下のとおりです。

2023年06月25日

6月の民話学習

6月10日(土)13:30~15:00
参加者9人
「縄文時代の原始信仰」

【学習内容のまとめ】
縄文の信仰
①ヒモロギ信仰<森> ➁イワクラ信仰<岩> ③カンナビ信仰<山> ④コトダマ信仰<言葉> ⑤ムスヒ信仰<霊>
ヒモロギ信仰は、麻と密接に結びついている。神社神道を象徴する幣(ぬさ)、神の衣服は麻を原料とする。縄文土器の縄目となる縄の原料も麻。麻は森に自生し、痺れ薬としても知られていた。
縄文時代の集落の成立要素は、➊食物の確保 ➋信仰の確保 であった。自然に対する畏敬の念は、縄文時代から生まれた発想。⇒日本人は、借景・枯山水など、自然を生活の中に取り入れている。
対して、弥生時代の成立要素は、これに、➌戦力 が加わる。縄文時代は、争う発想がない。三内丸山遺跡は1000年以上の歴史を持つが、外敵を防ぐような機構は存在しない。
縄文時代には火が用いられるようになったことで、革命的変化をもたらす。食物(肉)を煮・炊き・焼くことで、嚙む力が弱まり骨格(顎)をも変化させる。

古代日本の山と信仰
①三輪山と香具山 ➁葛城山と役行者 ③筑波山と富士山 ④降臨神話と高千穂峯 ⑤御岳山 ⑥出羽三山 ⑦高野山 ⑧立山 ⑨熊野詣 ⑩岩木山 ⑪恐山
「白山」は「ハクサン」「シラヤマ」二通りの読み方がある。「ハクサン」は朝鮮語が語源。「シラヤマ」は日本語。

2023年06月10日

5月の民話学習

5月13日(土)13:30~15:00 
参加者6人
「日本神話における山岳信仰Ⅱ」

【学習内容のまとめ】
高天原の神と地上の神が最初に結ばれる二つの場面に、オオヤマツノカミが関わっている。
①スサノオとクシナダヒメの結婚・・・クシナダヒメはテナヅチ・アシナヅチの娘であり、オオヤマツミは祖父にあたる。
➁ニニギとコノハナサクヤヒメの結婚・・・コノハナサクヤヒメの父がオオヤマツミ。
二場面ともオオヤマツミが関わっており、「山」との関係が重視されている。
『目で見る民族神』(萩原秀三郎著)に、山と里との関係性が著されている。「奥山」は山岳信仰の対象である《山》であり神の依り代である。「里山」は《森》。「里」は《柱》と位置づけられ、集落に寺・社が存在する。寺は檀家をもち個人の信仰、社は集落の信仰の対象とされる。神は三者を去来する。「野」には田畑がある。
山には、カンナビ(山の神)・ヒモロギ(森の神)・イワクラ(岩の神)が宿る。他に、ヒ(火・霊・日・陽の神)が存する。神は必要な時(祭り)に山から降りてくる。祭り以外に神を呼ぶには音が必要。
諏訪大社の御神体は守屋山。廃仏派の物部守屋は、崇仏派の蘇我氏(馬子)に滅ぼされている。
注連縄は、元は麻糸(緑色)で綯われていた。麻糸で織った着物は神の着物であった。

2023年05月13日

4月の民話学習

4月15日(土)13:30~15:00 
参加者8人
「日本神話における山岳信仰」

【学習内容のまとめ】
外国(中国・朝鮮)向けに漢文で書かれた日本書紀に対し、自国向けに書かれた古事記に原神話的なものが残されている。
古事記の日向神話の中で山の神として登場する大山津見神(大山祇神=オオヤマツミノカミ)の娘、木花佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)。
木花の花は桜であり、「サ」は接頭語で兆し、「クラ」は庫=神の依り代を意味する。
また、「ハナ」は端・先端=予兆であり、やがて実りとなる。人の体の端は「鼻」。桜の花は、咲くことで予兆、散ることで死→命の再生を象徴する。
高天原から降臨する天津日高日子番能邇邇藝命(アマツヒコヒコホノニニギノミコト)の「番=穂」は稲穂・穀霊、「邇邇藝」はにぎにぎしく(にぎやかに)成熟することを意味し、木花佐久夜毘売と結ばれることにより、豊かな実りが約束される。
邇邇藝の疑いを晴らすべく木花佐久夜毘売が産屋に火を放って産んだ子が、火照(ホデリ=海幸彦)・火須勢理(ホスセリ)・火遠理(ホオリ=山幸彦)。

2023年04月15日

春を呼ぶ昔ばなし語りの会

3月26日(日)13:30~15:00
とっこ館 語りの間で、「昔ばなし語りの会」を開催しました。
塩田の里 とっこ館との共催です。
とっこ館での語りは、コロナ禍もあってここ数年中断しており、4年ぶりの開催です。
13名の方が聴いてくださり、小学生も耳を傾けてくれました。

演目・お話の内容は、以下のとおりです。

2023年03月26日

3月の民話学習

3月11日(土)13:30~15:00
「山岳信仰」

【学習内容のまとめ】
原始的な山岳信仰は、縄文時代(1万~1万2千年間)から始まっていた。
弥生時代(2千年間)には鉄器の使用が始まるが、それ以前から渡来人との交流があったと推測される。朝鮮半島からリマン海流で南下し、対馬海流に乗って北上すれば、日本海沿岸に上陸することは難しくない。
縄文時代は狩猟の文化であり末期には稲作が始まるが、その間に雑穀の文化があり山の麓で集落を形成し焼き畑をしていた。火が用いられ、火を支配する神=山への信仰が始まったと考えられる。火を扱う者は神を呼ぶことができる呪術者であり、必要不可欠な存在となる。
原始的山岳信仰は、やがて特別な修行者である蜂子皇子や泰澄らによって出羽信仰や白山信仰となって発展する。キリスト教は排他的宗教であるが、神道は他の宗教と融合し発展する。
春、かつては神の依り代とするために山の柴(常緑樹)を取ってきて田の四隅に立て、山の神を呼んで豊作を祈り、秋には神を山に返した。山の神と水の神は一体のものであり、「鼻垂れ小僧」で山の柴を取りに行き川に流すのも、この所以だ。「桃太郎」冒頭の「爺は山へ芝刈りに婆は川へ洗濯に」も、これと繋がる。川へ洗濯に行くのは、神を迎える禊である。

2023年03月11日

青木村郷土美術館「昔ばなしの語り」

2023年2月19日(日)10:00~11:40
青木村郷土美術館 喫茶室で、昔ばなしを語りました。
主催は、青木村郷土美術館。「趣味アトリエ講座」の一貫で、『民話を聞こう』と銘打っての企画です。
コロナ感染拡大防止の観点から、定員10名としていましたが、13名の皆さんにお出でいただきました。
4人の昔ばなしの語りの後、お茶とおやきをいただきながら、みなさんで歓談。
「冠者さまとごまのサヤ」に登場する馬の蹄跡が子檀岳の麓の阿鳥川に残っていること(実は、青木村指定文化財「甌穴」)や、片目を失った者の話は鉄鉱石・砂鉄の採掘場やたたら場(製鉄炉)のあった場所に多く存在することなどの解説に、興味を持たれた方からの発言が相次ぎました。「でぃらぼっちの後家さん」の「でぃらぼっち」は、「でえらぼっち」「でぃらんぼう」など全国各地で様々な表現がされていることなどにも話が及びました。
上田市塩田の「小泉小太郎」の母親は蛇、松本・安曇の「泉小太郎」は龍。蛇の脱皮は死と再生を物語り、蛇が水中を泳ぐ姿は稲妻を連想させ、神社の注連縄も蛇を象っているといったことまで、話が弾みました。

4人の語りの演目・お話の内容は、以下のとおりです。

2023年02月19日

2月の民話学習

2月11日(土)13:30~15:10
参加者9人。
「白山信仰」第2回。

【学習内容のまとめ】
原始的白山信仰:白山を水源とする九頭竜川、手取川、長良川流域の水神・農業神。
奈良時代以降:泰澄が修験道として体系化。
『泰澄和尚伝記』(信頼できるものではない)によれば、
泰澄14歳 695(持統9=大化1)年、夢に十一面観音。
36歳 717(養老1)年、緑碧池(御前峰)=妙理大菩薩・本地十一面観音、右の孤峰(別山)=聖観音の現身・小白山別山大行事、左の孤峰(大汝峰)=西利の主(阿弥陀如来)・大己貴の3神を拝する。神仏習合。
加賀馬場・越前馬場による主導権争いが起こる。

2023年02月11日

新春昔ばなし語りの会

2023年1月29日(日)13:30~15:00
上田創造館にて、「新春昔ばなし語りの会」を開催しました。
昨年8月にも「昔ばなし語りの会」を予定していましたが、コロナ感染症の感染拡大を考慮して取り止めており、6月の開催以来7か月ぶりの開催です。
40名近い観客の皆さんにお出でいただいて大入り満員となり、民俗資料館の囲炉裏前の土間に16名、板塀内側に10名に座っていただいたほか、板塀外のフロアにモニター席を設けて映像で視聴していただきました。
創造館スタッフの皆さまには、いつもながら大変お世話になりました。ありがとうございました。

語りの演目・お話の内容・語り手は、以下のとおりです。

2023年01月29日

1月の民話学習

1月14日(土)13:30~15:20 
昨年11・12月、コロナの感染拡大で中断していた民話学習会を3ヶ月ぶりで行いました。
参加者9人。
今年のテーマは「白山信仰」。その第1回。

【学習内容のまとめ】
白山信仰の主神は菊理媛神。『日本書紀』(巻一・神代上)にのみ登場する。本文と異なる「一書(あるふみ)」で始まる別の言い伝えの10番目の記載。黄泉国から逃げ帰る伊弉諾に言葉を投げかけるが、何を言ったかは記されていない。その後の伊弉諾の行動から、禊に行くことを勧めたのではないかと推測される。
白山は、富士山・立山と共に三大霊山。富士山は浅間神社・木花開耶姫が祭神。白山は白山比咩神社・菊理媛神。いずれも女神。一方、立山は雄山神社・伊弉諾命で男神。加えて、地獄説話とも結びつく。

2023年01月14日

民話 語りっこ 学びっこ

10月29日(土)13:00~17:00
塩田公民館において「民話 語りっこ 学びっこ」を開催しました。
「民話フェスティバル」15年(1998~2012年)、「民話のひろば」5年(2014~2018年)に続いての企画です。
コロナ禍の中、半日開催に絞っての開催でしたが、70名近い参加者にお出でいただきました。
参加いただいたみなさま、また、情報発信をしていただいたマスコミ、ご協力いただいた関係者のみなさまに感謝申し上げます。

学習講演会 13:00~14:30
塩田平民話研究所長 稲垣勇一が、「山人・暮らし・山姥伝承」と題した講演を行いました。
講演の要約
文献に歴史上初めて「山姥」が登場するのは、室町時代の謡曲「山姥」(世阿弥 作)。「百万山姥」の異名をもち曲舞(くせまい)を得意とする白拍子が、善光寺詣でのために京都から出立し越中・越後境の上路(あげろ)越えをする際、本物の山姥に出会う。山姥の謡いの中で、山姥の真髄(輪廻妄想・山を巡り、生まれも知らず)が語られる。
江戸時代には、喜多川歌麿の浮世絵「山姥金太郎盃」や長澤蘆雪「山姥育児図」にも山姥が描かれている。蘆雪の山姥像からは、山人の暮らし、山人に対する里人の視点が窺える。とりわけ、大きな笠に着目したい。
赤坂憲雄著『漂泊の精神史』の中の「平地人のコスモロジー」の図に、山人と里人の関係性を見ることができる。境界となる場所に設営された神社は、両者の交易の場となっていたことを物語る。両者をつなぐ漂泊人の中から、職能人が発生している。里人からの視点で見た山人の象徴化が「山姥」につながる。
鬼女は現世(人間界)の怨念によって表出したものであり、現世と異界との境界に出現し、現世と行き来し現世に戻ることもあり得る。一方、山姥は異界に存在する。
斉藤隆介作・滝平二郎絵『花さき山』の山姥は、現代人がとらえた山姥像の一つである。
稲垣自身は、下伊那の民話「焼棚山の山姥」をこよなく愛する。里人との深い交友を求め里人に尽くしながら、偏見の中で殺されていく山姥の哀切さに強く惹かれる。
民話は、すべて里人側からの視点で描かれている。山人側から描かれた民話は見当たらない。そうした民話を見つけ出すことができないものか。

 

民話語り発表会 14:30~16:00
以下の演目が語られました。
 塩田平民話研究所  「鬼の面とお福の面」市川和枝 「百匁ろうそくとお婆」金箱陽子
 民話塾スマイルキッズたんぽぽ 「一休ばなし」土屋叶実
 六合の文化を守る会 「さる地蔵」山本 茂 「河童伝説」安原キヌエ
 塩田平民話研究所  「山姥の反物」豊田美和子 「喰わず女房」坂井弘子 「舞の川の山んば」坂井 弘
民話塾スマイルキッズたんぽぽは、稲垣所長指導による子ども対象の民話の語り講座。土屋叶実さんは小学校4年生。語りに入ると、会場がいっぺんに華やぎました。
六合の文化を守る会のお二人には、群馬県中之条町から車で2時間かけてお出でいただきました。

交流会 16:00~17:00
14人が参加。
交流会で話題にされたこと
怖い山姥は、里人側からの視点で描かれたもの。山姥に想いを寄せて語ることには元々無理がある。山姥に想いを寄せて語ろうとするのであれば、やさしい山姥の話を選ぶ以外ない。
山姥は酒・餅が好き。酒や餅は神への供物であることとつながっている。

2022年10月29日

上田市立第六中学校 語りの会

上田市立第六中学校に招かれ、10月17日と20日の二回、語りの会を行いました。
主催は、六中図書館教育係と生徒会図書委員会。六中で語りの会が始まったのは2011年。一昨年、コロナで中止を余儀なくされたほかは、毎年行ってきました。今年で11回目の開催です。
17日に2学年、20日に1学年と3学年、それぞれ学年単位で行いました。
演目は、以下のとおり。
1学年「山姥の反物」「小泉小太郎」  2学年「いわなの怪」「子育て幽霊」 3学年「つつじの娘」「海を渡ったカラス」
六中生は、いつも、語り手を真っ直ぐ見つめて聞いてくれます。お話につれて顔の表情が柔らかくなり、語りの世界に入り込んで聞いていてくれることがわかります。中学生と創る素敵な語りの世界です。 

2022年10月20日

10月の民話学習

10月8日(土)13:00~15:00 定例の民話学習会を行いました。
今回の参加者は、塩田平民話研究所の所員7人と友の会員4名の計11人。
テーマは「山姥」。
稲垣所長を講師に、山人と里人の暮らしの様子を境界を境に対比的に考えました。

【学習内容のまとめ】
山人の生活は狩猟と共に鉄製品の製作。里人は農耕。それぞれの生産物を持ち寄って物々交換する市が立ち、公正に行われるための拠り所として神を祀る鳥居ができた。山人が身に着けていたのは獣の毛皮、杖、笠。笠は物々交換した荷物を頭上に乗せて運ぶ運搬具ともなった。そうした里人と異なる山人の姿から、山姥が誕生していく。
長澤蘆雪の「山姥育児図」には、笠をつけ、足元に金太郎を伴った山姥の姿が見事に描かれている。
赤坂憲雄『漂泊の精神史』が裏付けの参考文献となる。

2022年10月08日