12月の民話学習

12月16日(土)13:30~15:00
参加者6人
「ジプシーの昔話『なんでも見える鏡』」(フィツォフスキ:再話 内田 莉莎子:訳 スズキ コージ:画 福音館書店)

【学習内容のまとめ】
グリム童話「あめふらし」と同じ内容だが、グリムの王女は男に助けてもらい好かれるだけの存在であるのに対し、『なんでも見える鏡』の王女は自らジプシーに恋をし自立していく点で異なっている。グリムの時代のヨーロッパの生活・考え方が女性は男性に従属するものとしての扱いを受けていたのに対し、ジプシーの生活様式・文化においては女性自身が役割をもって生活していたことの反映である。
『なんでも見える鏡』でジプシーを助けるのは、1銀色の魚・2若ワシ・3アリの王さまの3回。昔ばなしのセオリーどおりであるが、同時に、1単体の水中生物・2複数の空中生物・3群れの地中生物へと、数量と生息域を発展させる。また、1から2では身近なところから遠くの場所に視座を移すが、2から3では王女のすぐ近くへと視点が大転換される。
1は存在そのものに過ぎず、2あることで比較・特色・葛藤が生まれ、3は新しい価値を生み質の違うものが創造される。昔ばなしの3回の繰り返しも、この法則に則っている。
『桃太郎』の援助者となる1犬・2猿・3雉についても、「忠誠・知恵・勇気」の象徴とする固定観念ではなく、1身近な動物から2野生動物、さらに3空中のそれへと展開し2から3の場面で決定的飛躍がある。神話『大国主』の根の国の出来事も同様であり、スサノオの持ち込む難題 1蛇の室・2蜈蚣と蜂の室・3火の海となる野原に射込んだ鳴鏑の3回は、1・2の室から3の野外へと転換され、スセリビメが援助者となっている。
鏡は助けるもの、帽子の飾りはジプシーの象徴であることにも着目しておきたい。

2023年12月16日