第3回 民話 語りっこ 学びっこ
2024年11月17日(日)13:00~16:15
川西公民館において「第3回 民話 語りっこ 学びっこ」を開催しました。
40名近い皆さんに足を運んでいただきました。
学習講演会 13:00~14:30
塩田平民話研究 稲垣勇一所長が講演しました。
配布資料
山里の縦軸構成 -山里民の視点から- 奥山-里山-山里
1 奥山=神在す場・水源 畏敬(軽易・怖れ)
⑴ 一般人は立入り禁止 ⑵ 特別に神仏に許された者のみが入山可能。白山の場合=泰澄
2 里山=異界を含む境界
⑴ 異界 ◎祖霊=山里を守り育てる。三十三年後は奥山に移って神に。
◎妖怪=さまざまに、山里の人々やその暮らしに関わる。天狗・鬼・小豆とぎ・河童などなど
⑵ 境界 ◎動物=さまざまに、里人やその暮らしに関わる。狐・狸・猿・蛇などなど
◎人々=非定住、通過する人々。宗教者・芸能人・技術者・職人・商人などなど
3 山里=高地を主軸として暮らしに必要諸要素の集合体
⑴ 農村共同体に属する人々 ⑵ 定住者
真田の狐ばなし
『魚取りと狐』
石舟に住む仲のいい夫婦。お母に「ばあちゃんが『魚でも食べてえなあ』と言っていた」と言われ、次の朝、お父は魚取りに出掛け、川ぼしをして魚をたくさん取る。ところが、自分の家がまっ赤な炎を上げて燃えているのを見て飛び帰る。しかし、家は無事。「夢でも見たんじゃあないのかえ」とお母に笑われ、川に引き返すと魚は一匹残らずなくなっていた。向うの木陰で狐が一匹、いたずらっぽい顔をして見ていた。「まあ仕方あるまい」とつぶやいて、お父は家へ帰る。
『山遠家の狐』
荒井から石舟に向かう小高い山すそあたりを山遠家と言い、このあたりに一匹のいたずら狐がいた。真田の善吉が町に薪を売りに行った帰り、山遠家に差しかかると子どもが迎えに出ていた。善吉は子どもを荷車に乗せて縛りつける。家に帰ると、案の定、子どもが家から飛び出して来た。荷車に縛りつけた子どもは、思ったとおり山遠家の狐だった。松の木に縛りつけて松葉でいぶそうとするが、おかみさんにたしなめられ、狐を逃がしてやる。その晩、おかみさんの枕元に狐がやってきてお礼をしたいと言うので、去年亡くなった一人娘のおらんの思い出に蘭を一株所望すると、翌朝、望みどおり、蘭が鉢に植えられていた。
『狐の恩返し』
村長の山の一番大きな山桜の根元に、父娘の親子の狐が棲んでいた。村長が食べ物をやって可愛がっていると、狐が遠い親戚の娘に化け、村長を迎えに行って家に招き、座敷に通して膳を並べて取りもつ。帰りには、一人きりのときに見るように言って、玉手箱をくれる。箱の中にはきれいな女がいて、見ていると気持ちが安らぎ笑顔になる。そんな村長を見ていると村人も幸せな気分になって、村はますます栄えた。不思議に思った家の者が、村長の留守に箱を開けてみると、中には狐がいて、箱から抜け出して消えてしまった。
真田の狐ばなしは、三話とも、狐と山里に暮らす人々との暖かな心の通じ合いが描かれている点で、他の地域の狐ばなしとは異なる特徴を持っている。
民話 語り 14:30~16:15
語り手
六合の文化を守る会 安原キヌエさん・中沢久美恵さん
民話キッズたんぽぽ 土屋叶実さん
塩田平民話研究所 小林寛恵・塚越紗衣・市川和枝・坂井 弘
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かみそり狐
女に化けた狐を囲炉裏の煙でいぶしたが、正体を現さず死んでしまう。供養にと、頭を剃ってくれた坊さまもまた狐だった。
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魚取りと狐
家が火事になっているのを見て、大漁の魚を川に残して飛んで帰るが、家は無事。川に戻ると魚はなく、狐がいたずら顔で見ていた。
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カッコ カランコ カラリンコン
夜中に聞こえてきた奇妙な歌、♪めんたま みっつに はぁにまい…。女の子が歌の正体を突き止めてみると、下駄のお化けだった。
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三つのねがい
母の病気平癒を願って神様にお願いしに行く途中、三つの願いを言付かる。聞き入れられる願いは三つきり。他に『へっぴり嫁』
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十二支の始まり
元旦に神様のところにやってきた順番で十二支が決まる。牛の背中に乗った鼠が一番、猫は鼠に騙され番外に。他に『さる地蔵』
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和尚さまと子ぎつね
和尚さまが「南無阿弥陀仏」と書いたお札を女の子に持たせ後を追うと、寺の近くの草むらで母狐の亡骸を子狐が守っていた。
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きつねにょうぼう
我が子に正体を知られた狐女房。泣く泣く山に帰るが、かかが田植えした稲が実り、とっさぁと子は楽に暮らせるようになる。
予定した交流会は行わず、語り終了直後、お聴きいただいたみなさんに感想を語っていただきました。
以下は、聴衆のみなさんから文章で寄せていただいた感想です。
<学習講演会>
○ 真田の狐ばなしの終わり方が共通している点、考えてみたい。
○ 真田塾にてお話を聞かせていただき、今日はその復習と、より深いお話が聞けて良かったです。
○ 稲垣さんの博識には、いつも驚きつつ敬意を感じています。きつねの話は、塩田平にはなく真田にはいろいろあるという。興味深くききました。
○ 山里ときつねの話は、とても興味深く聞きました。優しさで終わる民話はとても良かった。機会があったら読んでみたいと思った。
○ 興味深い内容で良かったです。92才とは思えないお話で、すごいと思いました。
○ 山と里との関係をひもといてくださり、忘れかけた子ども時代を思い出しながら聴いた。今は荒れているのが残念!!
○ 先生の識見と語りに圧倒されました。ご活躍を祈っております。
○ 大変おもしろかった。
○ 民話が古人の生活に密着して生まれたことを知りました。(単に空想ではなかった。) どう伝承されたか興味がわきました。
○ 人間と狐の暖かい関係のお話、とても素敵でした。人間同士も、こんなやさしい関係ができるといいですね!
○ 墓地が山里の方を向いていることを教えていただきました。33回忌の意味も教えていただき有り難いです。狐の生態が農業と深く関わっていたことを教えていただきました。塩田平には狐の話はないことも。ありがとうございました。
民話 語り
○ 他県の民話も聞けて良かったです。
○ 皆さん、語りが上手ですね。どうやって覚え練習していらっしゃるのか知りたいと思いました。新人の方も新人と思えないような流ちょうな語りでした。どのくらい練習したのでしょうか。自分たちもいずれ語りができるとよいなと思っています。六合の方々の語りもとても良かったです。
○ 語りはとても素晴らしかった。また次回聞いてみたい。読んで聞かせることと語りでは、語りの方が心に届くように思った。
○ 楽しませていただき、ありがとうございました。皆さんお上手でびっくりしました。
○ 動物と人間とのかかわり!! 大変暖かい気持ちが生まれた。「やさしさ」が生む効果、良いものだ。
○ 想像に難くなく楽しめた。
○ 『へっぴり嫁』の「へや」の由来は、笑えました。
○ 楽しいお話が聞けました。ありがとうございます。
○ 語りの会は、初めて聞かせてもらいました。本当に上手に速さ・言葉も解り易く聞くことができました。小学生の『カッコカランコカラリンコン』も、特に可愛く聞きとれました。これからも民話を語る会を続けてほしいものです。
○ 物語の情景を想像しながら、皆さんの語りを楽しく聞かせていただきました。ありがとうございました。『きつねにょうぼう』のお話が、特に感動的でした。
全体
○ いい会です。面白かった。
○ 勉強になりました。楽しかったです。
○ 楽しいひとときをありがとうございました。またぜひ参加したいと思います。
○ 語りの文化の継承をしっかりやっていて、すばらしいと思います。衣装はみんな民話風ですが、どう調達しているのですか? 表紙の絵が上手ですね。誰がかいたのですか?
民話の語りの豊かな世界を感じました。どこの原話を持ってきているか知りたいです。
○ 語りはむずかしいと感じました。
○ 先生の識見と語りに圧倒されました。ご活躍を祈っております。
○ ほっこりする時間でした。
終了後、六合の文化を守る会の皆さんとともに、スタッフみんなで記念撮影。