お仙が淵が引っ越し?

「木橋が壊れてしまっていてお仙が淵には行かれない」と聞いたのは、10年以上前のこと。今はどうなっているのかと訪ねてみた。
県道62号線の終点、美ヶ原高原に通ずる分岐点に建つ武石観光協会から、県道464号線(美ヶ原公園西内線)を武石川・巣栗渓谷に沿って1㎞程遡ると、駐車スペースに地図を刻んだ木製の観光案内板が立ち、ここが「お仙が淵」であることを示している。目の前の焼山沢石堰堤が武石川を堰き止め、流れ落ちた渓流が滝下の岩棚を滑り下り、淵に注ぐ。見事な景観だ。今年10月に取り付けられたばかりの真新しい単管パイプの急峻な鉄骨階段を下り、間近に淵を眺める。駐車スペースに戻り、徒歩で2、3分下ったところに、かじか橋と呼ばれる木橋がかかっており、対岸に渡って四阿から淵を眺めることもできる。(12月6日)


9日後の15日、稲垣所長を誘って再びこの地を訪れた。平地ではまだ雪の便りを聞かないのに、武石観光協会から先は既に雪道となっていた。所長は、「この淵は初めて見た。かつて見たお仙が淵とは違う」と言う。以前のお仙が淵は、武石観光協会のすぐ脇から武石川に下り、壊れてしまっている木橋を渡って対岸から回るしか行くことができなかったはずと怪訝そうな顔。道中1㎞の間に立つ何基かの案内看板をつぶさに見直してみると、看板によっては以前のお仙が淵の位置を示しているものもある。壊れてしまったという木橋の名は、お仙が橋。今は跡形もない。
帰宅して情報を精査してみたところ、所長の言うとおり本来のお仙が淵に行くには、今は川に浸かっていくほかないらしい。近くに「お仙が淵」の民話のあらましを綴った看板も建てられていた気配がある。
新たなお仙が淵を「お仙が峡」と記している地図もある。
貴重な民話の聖地が、正しく整備されることを期待したい。

2022年12月15日